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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(オ)882号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人銭坂喜雄の上告理由第一点について。

原判決がその理由前段において「被控訴人(上告人)が免許を受けた金融業者であることは当事者間に争がない」と判示しながら、その後段において「被控訴人提出援用のすべての証拠によつても被控訴人が免許を受けた金融業者であることが認められないから、本件貸金に対する期限後の損害金につき利息制限法の適用を排除すべき法律上の根拠がない」と判示していることは所論第一点のとおりであつて、この判示に即するかぎり、原判決は当事者間に争のない事実を証拠上これを認め難いとした違法があり、また上告人が免許を受けた金融業者であることが認められないことを理由として、本件消費貸借に旧利息制限法五条の適用がある趣旨を判示したものと認められ、原判決はこの点においても、理由不備の違法を認めざるを得ない。けだし「貸金業等の取締に関する法律」(昭和二四年法律第一七〇号同二九年法律第一九五号により廃止)にいう貸金業は、何人でも同法三条の届出をすれば自由に行うことができると解すべきものであるのみならず(昭和二六年(あ)第八五三号同二九年一一月二四日大法廷判決、集八巻一一号一八六〇頁参照)、前記原判示は、上告人が貸金業の届出を受理された金融業者でないとする趣旨としても、貸金業者が前記法律によつて貸金業の届出を受理されたからといつて、かかる者のなす金融行為自体が商行為となるものでもなく、従つてまたかかる貸金業者が商人と認められるものでもないから(商法五〇一条及び五〇二条参照)、上告人が前記法律により貸金業の届出を受理された者であるが故に当然商人であるということはできないからである。従つてまた本件消費貸借が商行為であることを前提とする所論は採用することはできない。しかしながら、原判決認定の事実によれば、本件消費貸借がその成立当時の商法施行法一一七条にいわゆる商事に当るものとは認められないから、当時施行の旧利息制限法五条の適用があるという趣旨にほかならない原判示は結局正当であつて、前記の違法は判決の結論に影響がないものといわなければならない。従つて所論は採用できない。

同第二点について。

また原判決は、本件消費貸借の期限後の損害金を一〇〇円につき一日五〇銭とする約定があつたことを認定した上、前記五条の適用を排除すべき根拠がないとして、上告人の損害金の請求につき、「制限利率の範囲内である年一割の割合による遅延損害金の支払を求める限度において正当」と判示しているのであつて、同法五条は、金銭消費貸借における期限後の損害金の約定につき裁判官がこれを不当と思料した場合、これに対し相当の減額をなし得べき旨を規定するものであり、原判決が右五条を適用すべきものとしている以上、本件当事者間における前記損害金の約定を、同条により年一割の限度において有効と認めた趣旨にほかならないと解するのが相当である。この点につき原判決に違法ありとする所論は採用できない。

その他の論旨は最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律(昭和二五年五月二四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず又同法に所謂「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものとは認められない。

よつて民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条により裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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